「光」   

「まぁ、よく観に行くわね」と言われそうだが、昨日新宿バルト9で、河瀬直美監督の「光」を観た。

今年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された作品だ。

惜しくも賞は逃がしましたが。


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視力を失いつつある著名なカメラマンと、映画の音声ガイドの制作に携わる女性の話である。

映画の音声ガイドとは、目の不自由な人のために、風景や登場人物の動きを言葉で伝える仕事だ。
                                              

主役のカメラマン・雅哉に、永瀬正敏が扮している。

カメラマンにとって光を失うとは、どれほど残酷なことか。

その悲しみや苛立ち、深い絶望を、永瀬正敏が体全体で見事に演じている。

去年「64(ロクヨン)」を観たとき、「永瀬正敏って、こんなにうまい役者だっけ」と感心したが、今回も観ている者の心に沁み入るような演技だ。
                                           

もう一人の主役は、音声ガイド製作者の美佐子(水崎綾女)。

彼女は、ガイド原稿のレクチャーの場で、モニターの雅哉から「今日のガイドは今のままなら邪魔なだけ」と酷評され、反感を覚える。

でも、この出会いから、ふたりは少しずつ近づいていくのだ。
                                              

視力を失っても、希望の光はあるのだろうか。
かけがえのない人がそばにいてくれたら、たとえ道が暗くても歩いていけるだろうか。

静かな感動を覚える作品だが、パンフ等に記された「珠玉のラブストーリー」という文言に、「ン?」と引っかかった。
                                                      

たまたま今、山田詠美の「珠玉の短編」を読んでいるせいか。

短編集なのだが、本のタイトルにもなっている「珠玉の短編」は、女性作家の話だ。

作家・夏耳漱子は、出版社から送られてきた某小説雑誌の目次を見て、たまげる。

なんと、自分の書いた小説の題名の横に「珠玉の短編」とあるのだ。
気味悪!と放り出してしまう。

なにしろ彼女の作品は、下品さ、えげつなさがウリ。格調高さは敵である。
それを、「珠玉の短編」とはなんだ!担当編集者の怠慢だ。やっつけ仕事だ。許せん!

誉めどころに苦労する短編には「珠玉の」と付けておくのがならいなのに違いないと、夏耳先生、憤ること甚だしい。
                                              

「光」は格調高い作品ではあるけれど、「珠玉のラブストーリー」とはね。

甘~い恋愛映画の宣伝文句のようで、どうもしっくりこない。

河瀬監督はこだわりが強そうに見えるけど、その辺りはどうなんでしょう。

夏耳漱子先生(なんともふざけた名前だが)とは、違うか。

話が逸れましたねm(__)m


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by masayama-chan | 2017-06-03 21:22 | 映画三昧 | Comments(2)

Commented by としちゃん at 2017-06-04 10:56 x
マサさん、映画や小説に感動しても、そのPRの仕方が気に食わないことってありますよね。
そんなんじゃないのよ、と言いたいですよね。
というか、捉え方が自分の感性と合わないというか、
あまりに宣伝臭くて嫌になることもありますね。
作者や著者にしてみれば、どんな気持ちなのでしょう。
簡単にラブストーリーなんて言われたくないでしょうね。
私はへそ曲がりなので、よく分かります!
Commented by masayama-chan at 2017-06-04 20:45
としちゃんへ(マサ)

甘いラブストーリーでは、ないですからね。
そう思っていくと、ちょっと期待はずれかもしれないですね。
まぁ河瀬監督が描く世界が、甘いラブストーリーであるはずもないですが。

「珠玉の短編」は、山田詠美の経験談かもしれないですね。
極端に盛ってはいますが。
ちなみに夏耳漱子先生の短編のタイトルは、「きょうだい血まみれ猫灰だらけ」です(笑)

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