カテゴリ:映画三昧( 168 )   

「小さいおうち」   

先週の金曜日、府中で「小さいおうち」を観た。
原作は中島京子の直木賞受賞作。山田洋次監督が映像化した。


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寅さんに代表される山田監督の作品はあまり好みじゃないのだが、これはぜひとも観たかった。
なぜなら、「小さいおうち」には、どこか秘密めいた響きがある。


昭和の始め。東京郊外の坂の上に立つ赤い三角屋根の家。一際目を惹くモダンな造りだ。
そこに、東北の田舎から上京した若いタキが女中奉公に入る。
玩具会社重役の旦那さま、奥さまの時子、5歳になるぼっちゃんの恭一。
タキは美しく上品な奥さまに憧れ、ひたすら働く。
穏やかで楽しい日々に狂いが生じるのは、旦那さまの部下で板倉という青年が現れてからだ。
板倉に時子が魅かれていく。

ある日、板倉の下宿を訪れた時子。
その様子を、タキは見逃さない。
出かける時左側にあった帯の柄(線)が、帰って来たときには右側にある。
ふたりの関係が、涙が止まらないほど不安で、胸が締め付けられるほど悲しいのは、時子へのどんな思いからだろう。


時子を松たか子、晩年のタキを倍賞千恵子、若き日のタキを黒木華が演じている。
円熟?老成?の倍賞千恵子、初々しい黒木華、どちらも素晴らしい。
でも、圧倒的な存在感を見せるのは、時子役の松たか子だ。
無邪気で上品で、匂い立つように美しい。そして、背徳の香りがする。

板倉役には吉岡秀隆。
「この配役、ちょっとどうなの?」という気がしないでもない。
なにしろ板倉は、時子が心ときめかす30歳前の若くてカッコイイ男なのだ。

でも、そんなことはどうでもいいくらい、これは3人の女優の映画です。
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by masayama-chan | 2014-02-10 15:28 | 映画三昧 | Comments(4)

「夏の終り」   

昨日、下高井戸シネマで、「夏の終り」を観た。
瀬戸内寂聴が、瀬戸内晴美時代の1962年に発表した小説が原作だ。


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主人公・知子(満島ひかり)は、かつて夫と子供を捨て年下の青年・涼太(綾野剛)と駆け落ちした過去を持つ。
今は、家庭のある年上の作家・慎吾(小林薫)と暮らしている。
慎吾は、妻子のいる家と知子の家を行ったり来たり。律儀に半々ずつ。
8年に及ぶ慎吾とのそんな生活に不満はなかったはずなのに、ある日知子の前に涼太が姿を現したことから、心が乱れていく。

穏やかな年上の男と、激しい感情をぶつける年下の男。
ふたりの男の間で、心揺れる女。
小説は瀬戸内晴美の自伝的要素が濃いという。

慎吾は、やさしく寛容で穏やか。でも優柔不断でずるくもある。
そんな男を小林薫が、この役は彼以外には考えられないほど自然に演じている。
嫉妬に苦しみ激情をむきだしに知子を求める一途な綾野剛もいい。
満島ひかりは、ふたりの男との関係に惑い苦悩する知子を、激しく生々しく好演している。
ただ残念なのは、満島さん、いかにも若過ぎでは。知子は、たぶん40歳くらいの設定のはずだ。
物語は現在と過去が交錯する形で進行するが、見ていて過去か現在か、時々わからなくなる。だって、どちらの満島さん(知子)も若いのだから。

熱さに身を委ねた「夏の終り」は淋しい。でも、終わらせなければ、前には進めない。
爛れた三角関係を描いていても、終わりは案外スッキリだ。
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by masayama-chan | 2014-01-25 17:23 | 映画三昧 | Comments(8)

「永遠の0」   

今日、府中の映画館で「永遠の0」を観た。
実は戦争ものは好みではなく、当初は「ジャッジ!」を観るつもりでいた。
ところが娘に、「そんなくだらないものより(妻夫木クンごめんなさい)、「永遠の0」を観てみたら」と勧められ、急きょ変更。
娘は日曜日に観て、いたく感動したそうだ。


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原作は百田尚樹。累計発行部数350万部を超える大ベストセラーの内容を今更説明する必要もないでしょうが。

主人公・宮部久蔵は零戦パイロット。
操縦技術にかけては天才的だが、敵と戦うより「妻と子のもとへ生きて還る」ことに執着し、臆病者と評されている。
その彼が、終戦直前、特攻に志願したのはなぜ?

とにかく、宮部久蔵を演じる岡田クンがカッコイイ。もう、ずるいくらい人間として素敵な役だ。
去年亡くなった夏八木勲さんをスクリーンで見られたのもよかった。

終盤は、館内のあちらこちらですすり泣く気配がした。
私も、妻と子のもとへ還ることのできなかった宮部久蔵の無念を思い、涙・涙・涙。

ただ一方で、この作品を「愛の物語」として感動していいのだろうかとも思う。そんなものではないはずだ。
私は原作を読んでいないのでなんとも言えないし、うまく説明できないが、底辺にあるのは未来ある若い命を散らさねばならなかった戦争への怒りなのではないのだろうか。
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by masayama-chan | 2014-01-17 22:22 | 映画三昧 | Comments(2)

ローズマリーの赤ちゃん   

昨日(11月25日)、下高井戸シネマで「ローズマリーの赤ちゃん」を観た。

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ロマン・ポランスキー監督によるオカルト・サイコ・ホラー映画としてあまりにも有名だ。

1965年頃のニューヨーク。
マンハッタンの古いアパートに住む主婦(ローズマリー)が、悪魔崇拝者の儀式によって悪魔の子を宿したというショッキングなストーリーだ。

映画が初公開された1968年当時、私はまだ10代だった。怖くて映画館に足を運ぶことなど出来なかった。
確かに、魔族が暮らしていそうな古いアパートも、隣のおせっかいな老夫婦も、怪しげな産婦人科医も、みんな不気味だ。

でも、昨日は全くもって、可笑しいくらい怖くなかった。
すべては不安定な精神状態に陥った妊婦の妄想としか思えない。
一時痩せてやつれてしまったり、隣人が作ったデザートがヘンな味がするのは、悪魔崇拝者の仕業ではなく、たぶん「つわり」のせいだ。
つまり、重症のマタニティーブルーの映画。
と私には思えたけど、原作はどうなんでしょう。
ホントに、ローズマリーは悪魔の子を宿したの?



ローズマリー役のミア・ファロー。
恐怖におののく妊婦役がピッタリ。
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by masayama-chan | 2013-11-26 18:07 | 映画三昧 | Comments(0)

清須会議   

三谷幸喜の最新作「清須会議」を観た。
監督初の時代劇だ。

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織田信長亡き後、織田家後継者と領地配分を決めるために、柴田勝家や羽柴秀吉らが清須に集う。
歴史に疎い私は、この「清須会議」なるものを知らなかったが、「歴史が動いた」と言われるほどの会議だそうだ。

清須会議の出席者は4人。
柴田勝家(役所広司)、羽柴秀吉(大泉洋)、丹羽長秀(小日向文世)、池田恒與(佐藤浩市)
武将たちの駆け引きは、役者たちの演技の見せ所でもある。
演技派揃いだが、中でも秀吉役の大泉洋が魅せる。まぁ、なんともしたたかなことよ。

ただ、「THE有頂天ホテル」や「ザ・マジックアワー」のようには笑えなかった。
館内からも笑い声はほとんど聞こえない。
思いっきり笑いたくて映画館に足を運ぶと、肩透かしを食らう。
そういう意味では不完全燃焼だったが、「清須会議とは、こういうものだったのか」と歴史を学ぶ意味なら、悪くない。


一番印象的だったのが、女優のメイク。
白塗りの顔にお歯黒。磨り落とした眉。一瞬ドキッとする。
鈴木京香のお市さま(凄みに圧倒されます)
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剛力彩芽の松姫(役者揃いの中で素人っぽい演技が際立っていました)
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by masayama-chan | 2013-11-20 16:17 | 映画三昧 | Comments(2)

そして父になる   

予告編を見るたびにウルウルし、公開を心待ちにしていた。
先行上映の昨日、早速観てきました!!
「そして父になる」

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6年間育ててきた息子は、病院で取り違えられた他人の子だった。
二つの家族は、実につらい選択を突きつけられる。
血のつながりか、共に過ごした時間か。
血のつながりを選べば、6年間愛情を注いで育てた息子を手放すことになる。
逆を選択すれば、血のつながりを諦めることになる。

病院側は、言う。
「前例では、100%ご両親は交換という選択肢を選びます」


<野々宮家>
福山雅治演じる良多は、大手建設会社に勤めるエリートサラリーマン。
妻みどり(尾野真千子)、一人息子の慶太と、都心の高層マンションに暮らす。
慶太は、おっとりしたお行儀のいい子だ。

<斉木家>
群馬で小さな電気店を営む雄大(リリー・フランキー)は、妻ゆかり(真木よう子)、6歳の琉晴を筆頭に3人の子供、そして父親との6人暮らしだ。
しつけの行き届かない子供たちは、ワンパクで伸び伸びとしている。


一方は人生を勝ち続けてきたエリートサラリーマン。
一方は、地方のひなびた電気店の店主。
両家の間には、明らかに社会的格差(経済格差)がある。
(ちなみに良多の愛車は、ブルーのレクサス。雄大の車は、年季の入ったワゴン車)
粗野で、のっけから慰謝料の話をする斉木家に、良多は嫌悪感を隠せない。


ジーンとする場面はたくさんあったが、部屋に飾られた慶太の写真を、みどりが一つずつ箱にしまうシーンが、一番ぐっときた。
交換を選んだ以上、6年間の思い出と慈しんだ慶太への愛を封印する決意なのだろう。
その切なさが胸を突く。


          「6年間は、パパだった」
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ラストは余韻を残す、というか、あいまいだ。
たぶん、それでいいのだろう。
正しい選択か、否か。そういう問題でもないのだから。


最後に少しだけ不満を言えば、
「取り違えは看護師による悪意」という設定は、どうなの?
後半の裁判の場面で、幸薄そうな元看護師が取って付けたかのように出てきて、「幸せそうな野々宮家に嫉妬して、私が故意にやりました」だなんて。
私は10何年か前に原作(ねじれた絆)を読んだけど、そんな展開だっけ?
ちょっと作りすぎのような気がした。


そして、言うまでもないが、福山がカッコイイ♪
エリート臭がときに鼻につく役柄だが、それはそれでカッコイイのだ!
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by masayama-chan | 2013-09-25 21:55 | 映画三昧 | Comments(4)

「よりよき人生」   

一月末にRSウィルスに感染してしばらく保育園を休んでいたTラだが、今週から元気に登園している。
先週は娘の夜勤が2回あり、小さな猛獣(笑)は我が家に常駐してやりたい放題だった。
部屋は足の踏み場もないほど散らかっていたが、それも今はすっかり片付いて、ヤレヤレだ。

でも、油断大敵。
通っている保育園では水ぼうそうが大流行していて、現在3人が休んでいるという。
感染力が非常に強いので、Tラが感染するのも時間の問題か。


ならば、この隙に遊んでおこうと、昨日は久々に映画を観に出かけた。
新宿武蔵野館で上映中のフランス映画、「よりよき人生」

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タイトルに魅かれた。
ハッピーな人生を描いた作品とは、逆に思えない。


自分のレストランを持つことを夢見るコックのヤンは、求職に行った店でナディアと出会い恋に落ちる。
レバノン出身のナディアは、9歳の息子のいるシングルマザーだ。
彼らは、遊びに訪れた湖畔で、レストランにうってつけの素敵な物件を見つける。
開業への夢が果てしなく膨らむヤン。
ただ問題は資金だ。銀行ローンを組むが、頭金の都合がつかない。
頭金を借りることでさらに多額の借金を背負いこみ、多重債務の泥沼にはまっていく。

ヤンの熱い夢をなんとか叶えさせてやりたいと、観ながら祈った。
でも、金がないという現実はどこまでも無慈悲だ。

ヤンの夢は夢で終わったけど、後味は悪くない。
タイトル(「よりよき人生」)の意味がわかった気がする心温まるラストだ。


映画の帰りは、デパートでショッピング。
思いがけなくジャストフィットのパンツに巡り合えた。
(注:キッズ用ではありません)

小雪がちらつく寒い日だったけど、私にとっては悪くない1日だったかな。
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by masayama-chan | 2013-02-20 22:32 | 映画三昧 | Comments(6)

人生の特等席   

クリントイーストウッドの最新作「人生の特等席」を観てきた。
御年82歳。今回は監督ではなく、主演俳優として味わい深い演技を見せている。

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演じるのは米大リーグのスカウトマン・ガス。
長年有力選手を見極めてきた名スカウトマンだが、寄る年波には勝てない。
認めたくはないが、視力の衰えを感じる昨今だ。

最後となるかもしれないスカウトの旅に同行したのは、ひとり娘のミッキー(エイミー・アダムス)
弁護士として活躍するミッキーだが、父親に対してわだかまりを持っていた。
6歳のときに母親を亡くした彼女は、親戚や寄宿舎に預けられ、父親に捨てられたと思っていたからだ。

平坦なストーリー運びである。
親子の確執も雪解けも、想定内というか、予想通りの展開で、目新しさはない。

幼いころ父親に連れられて行った球場。観戦したのは三等席。
いや、あれは三等席なんかじゃなく、私にとって特等席だった。
予想通りの展開であっても、ウルウルきた。
なにより、イーストウッドの偏屈な頑固ジジイぶりが楽しい。
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by masayama-chan | 2012-11-28 18:38 | 映画三昧 | Comments(6)

北のカナリアたち   

吉永小百合主演の最新作「北のカナリアたち」を、昨日府中の映画館で観てきた。

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北海道の離島が舞台。
20年前、小学校の教師・川島はる(吉永小百合)は、生徒6人の小さな分校に赴任した。
熱心に子供たちと向き合い、歌を通して子供たちの心を明るく前向きにする。
素敵な先生だ。
そんなある日、衝撃的な事故が起きる。
その事故がもとで、はるは追われるようにして島を出た。

湊かなえの「往復書簡」に収録された「二十年後の宿題」が原案。
本は読んだことがあるけど、ストーリーはだいぶ違う気がする。
でも、偶発的な事故が巻き起こすサスペンスの要素は投影されている。
哀しくせつなく温かいヒューマンサスペンスドラマだ。

20年後の子供たちに、森山未来、満島ひかり、勝地涼、宮崎あおい、小池栄子、松田龍平。
皆よかったけど、森山未来の演技が特に印象的だ。
ラストシーンで、「おれ、生きていていいだよね」と、はるに言う。
不幸な生い立ちと過酷な運命。つらい。明るい未来は想定できない。
でも、「生きている」そのことに意味はあるのだろう。

推定60歳の現在と、推定40歳の分校の教員時代を、小百合さんは演じ分けている。
いずれも透明感のある清楚な美しさだ。

小百合さんの夫に柴田恭兵、父親に里見浩太朗。
そして、出番は多くないけど、はるが島を追われるきっかけとなった警官役に仲村トオルが扮している。

あ~、ちょっとだけど、小百合さんと仲村トオルのラブシーンもあります!
仲村ファンの私としては、これをどのように受け止めたらいいのでしょう~(笑)
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by masayama-chan | 2012-11-16 16:22 | 映画三昧 | Comments(2)

終の信託   

昨日、府中の映画館で、「終の信託」を観てきた。
終末期医療を扱った、周防正行監督の最新作だ。


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呼吸器内科の女医・折井綾乃(草刈民代)と、重い喘息で入退院を繰り返す患者・江木秦三((役所広司)。
2人の間にあるのは、医師と患者としての強い信頼と、人間としての深い絆だ。
江木は自分の命の終わりを、綾乃に託していた。
「最期のときは早く楽にしてほしい」と。

そして、江木が心肺停止状態に陥ったとき、綾乃は重い決断を下す。

3年後、綾乃の決断が刑事事件に発展する。


綾乃を殺人罪で厳しく追及する検察官の塚原(大沢たかお)。

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「あんたがやったことは、殺人だ!」
「私は、回復の見込みがなくチューブに繋がれ苦しむ患者さんを、早く楽にしてさしあげたかっただけです」

「医療か?殺人か?」
難しいテーマだ。
綾乃の側に立つと、塚原は冷徹でイヤなヤツだが、自分の職務に忠実なだけだ。
そして、彼の言っていることは正しい(と私は思う)

綾乃が器官チューブを抜いたとき、江木はそのまま逝かなかった。
もがき暴れた。
綾乃は江木を抑えつけ、致死量の薬液を注射したのだ。
綾乃の行為は人間としては間違っていなかったのかもしれないが、法的にはどうだろう。

綾乃に下された量刑をどうみるか。
観客によって感想は、さまざまでしょう。

なにはともあれ、検察官役の大沢たかおが、カッコイイ~♪
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by masayama-chan | 2012-10-31 18:06 | 映画三昧 | Comments(6)