その夜の侍
2012年 11月 22日
小さな鉄工所を営む中村は、5年前に逃げ事件で最愛の妻を亡くした。
犯人の木島は、刑期を終えて出所。その木島のもとに、差出人不明の脅迫状が毎日届く。
「お前を殺して俺も死ぬ。決行まであと〇日」
ひとことで言うと、復讐劇だ。でも、単なる復讐劇ではなかった。
中村。
ぼさぼさの髪に分厚い眼鏡。
薄汚れた作業服からは汗と油の臭いが漂ってきそう。
風采の上がらない中年男だ。
妻を亡くした深い悲しみと喪失感の中で、彼は復讐を誓う。
抜け殻のようでありながら、狂気を感じさせる主人公に、堺雅人がなりきっている。
木島。
粗暴、粗野、野卑。
この世からいなくなって欲しいくらいのワルを、山田孝之が憎々しく演じている。
犯行日(妻の5回目の命日)。
台風到来。土砂降りの中、泥まみれになって格闘する中村と木島。
やるか、やられるか。
でも、ラストは意外な展開を見せる。
ネタバレになるけど、この映画のキーワードは、
「たわいのない話をしたかった」
木島に半殺しの目にあわされながらも、行動を共にする同僚の男。
難癖をつけられ辱めを受けながらも、木島に寄り添う女。
彼らの気持ちが、よくわからない。
男は言う。「暇だから」と。
女は?きっと寂しいのだろう。
「カーネーション」で名前を全国区にした綾野剛も重要な役どころだ。
「平凡に暮らしたい」と望みながら、いつも凶暴な木島のそばにいて翻弄され続ける。なぜ?
「おれがいないとダメだから」
登場人物は、みなしょぼくて哀しい。
木島も例外ではないのかもしれない。
新宿武蔵野館。
東京では、ここでしか見られない映画が結構あるのよね。
by masayama-chan | 2012-11-22 18:28 | Comments(6)
ポストにポツンポツンと入ってるあの喪中ハガキ、寂しいよね。
そのうち世代交代になって親でなく、連れあいや私自身になるのかしら?と思うと切ないわ。そう言うと娘に「くだらん、ネガティブなことばっかり言ってるよね」と一喝されるの。ホントに娘って性格がきついわね。
ところで映画、マサさんてわりとシリアスなものを観るよね。私はラブコメが好きだけど・・・(笑) でもですね、実は珍しく「北のカナリアたち」の鑑賞券を持っているので行かなければと思っていたら・・マサ解説がありました。
あのね、この映画の鑑賞券、金券ショップでいくらだったと思う?800円よ(驚)「いいの?」って聞いたらショップのおじさん「吉永小百合はあんがいいつも安いんだよ」だって。小百合様に失礼じゃないのかな?サユリストは泣くよね。まっ、私は終わらないうちにいくつもりですけど・・・。
「侍」というから時代劇だと思ったら現代劇だったのね。
今ね、クイントイーストウッドの映画が公開されるでしょ。
あれは見たいなと思っているところです。
うちなんか、「もう親ではなく、自分たちの世代なんだね」と言えば、「そうね」とあっさり。あっさり言われるほうが、よほどキツイ。
「北のカナリアたち」は、実は知り合いから鑑賞券をいただいたので観に行ったの。
特別鑑賞券で1000円とあったわ。
若い人は小百合映画は見ないだろうし、かといって、いわゆるサユリストがこうした映画に惹かれるとは思えないし。興行的には厳しいかもね。
でも、ひょっこりさん、これはラブサスペンスの要素もあるから楽しんできてね。そして、感想をぜひ聞かせて。
堺さんは、一筋縄ではいかない役、たとえば変人とか、狂人とか、思いっきり情けない人とかが、合う気がします。これ、誉めています。役者として。
イーストウッドの最新作は、よさそうですね~。
想定通りのストーリーみたいだけど、ほのぼのと温かそう。
私も観に行くつもりでいます。
でも、ラストシーンには、再生の予感がします。
出てくる人物は、しょぼくて寂しくて情けないのですが、愛すべき人たちなのかもしれませんね。
思ったより後味の悪くない作品です。