草原の椅子
2013年 02月 27日
宮本輝「草原の椅子」の文中にある印象的な言葉だ。
中央アジアのタクラマカン砂漠。生きて帰らざる海。生きては戻れぬ死の砂漠。
何年か前に図書館から借りて読み、感動した記憶がある。
佐藤浩市主演で映画化され、先週の土曜日から公開中。
嬉しい!
早速、府中の映画館で観てきた。
遠間憲太郎(佐藤浩市)は、カメラメーカーに勤めるサラリーマン。
妻とは離婚して大学生の娘と暮らしている。
家にある車はどうやらマーク〇のようだが、男の真ん中でいたいスマートな部長ではなく、意に染まぬ上司の指示にも「わかりました」と頭を下げ、事故にあった部下を気遣いながらも「大人になれ」と諭す、つらい中間管理職だ。
そんな彼が、ひょんなことから、赤の他人の圭輔(4歳)の面倒を渋々みるハメになる。
圭輔は、母親から受けた虐待がもとで心を閉ざし、4歳になっても言葉を発することが出来ない。
一方、取引先の社長・富樫(西村雅彦)からは、いい歳をして、「親友になってくれ」と懇願される。
そして、密かに思いを寄せるのは骨董店オーナーの篠原貴志子(吉瀬美智子)
彼らは偶然目にした写真に心を奪われる。
それは、世界最後の桃源郷と呼ばれるパキスタンのフンザ。
憲太郎、富樫、貴志子は、幼い圭輔を伴い、無謀とも思える旅に出かけるのだ。
心洗われるような景色の中で、彼らは今後の生き方を思う。
スクリーンに映しだされる壮大な景色にも目を見張ったが、なにより魅力的なのが佐藤浩市演じる遠間憲太郎だ。
といっても、けっしてカッコイイわけではなく、少々くたびれた中年男だ。
でも、ふてくされた表情の中に垣間見せるやさしさ、誠実さ。佇まいの正しさ。
宮本輝が描く主人公は、高潔という言葉が似合う。
原作の感動を裏切ることのない作品だ。
by masayama-chan | 2013-02-27 20:53 | Comments(4)
そうか、そんなにかっこいい役ではないのね。でもやはりかっこいでしょ。
西村雅彦が社長というのは、ちょっと?かな。
虐待母役の小池栄子も、インパクトのある演技を見せていました。
貴志子役の吉瀬美智子が、ちょっとね。長身できれいだけど、もっと情感が欲しかったわ。
特に小さな子供が出演しているわけだから。
でも、あの砂漠の景色を眺めたら、人生観が変わるんじゃないかと思うほど。
さとさん、時間があれあばぜひご覧になってくださいね。