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「愛、アムール」   

今日、新宿武蔵野館で観てきた。
「愛、アムール」
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感動と言う言葉では言い尽くせない、暗く深く重く、冷徹で真摯で尊厳に溢れた愛の物語だ。
本年度のアカデミー賞外国語映画賞に輝いたのも納得だ。

パリで暮す音楽家の老夫婦が主人公。
ある日、妻に病が襲い、リスクが低いとされる手術を受けるが、失敗。
右半身不随の身に。
「二度と病院には戻さないで」という妻の気持ちを尊重し、夫は自宅で献身的に介護する。
だが、妻の病状は次第に悪化し、心身共に正常さを失っていく。

ひとことで言えば、壮絶な「老老介護物語」だ。究極の愛の物語でもある。
衝撃的な結末と言えるし、予感どおりと言えなくもない。
「人生はかくも長く、素晴らしい」とセリフにあるが、
「人生はかくも残酷で、美しい」

夫役に、「男と女」のジャン=ルイ・トランティニャン。
「暗殺の森」もよかったな。
知的で寡黙でクールで、どこか影があり、座っているだけで絵になる男だった。

そんな彼も、すっかり歳をとった。
髪は薄くなり、皮膚はたるみ、動作は緩慢に。時の流れは残酷だ。
でも、それがなんだろう。
歳を重ねてこその名演だ。


武蔵野館のエレベーターは、愛一色。
「愛、アムール」_a0108328_237261.jpg

by masayama-chan | 2013-03-12 23:15 | Comments(6)

Commented by としちゃん at 2013-03-13 07:27 x
あ、この映画、絶対マサさんから報告があると思っていました。
この女優さんの若かりし頃のシーンを見ましたが、とても知的で
きれいな方だったのですね。日本映画にも出演したとか?
この映画、見たいけれどちょっと直視するのが怖いという感じです。
Commented by としちゃんへ(マサ) at 2013-03-13 14:53 x
妻役のエマニュエル・リヴァは、母と同じ年の生まれで86歳になるんですよ。
知的な美しさは、今も残っていますね。
昔、「24時間の情事」という広島を舞台にした作品に出たことがあるそうです。そういえば、タイトルは聞いたことがあるような。

二人はあまりにも自然で、演技をしているようには思えませんでした。
父も、この映画の妻と同じような経過をたどった気がします。母は、水を飲ませるのさえ大変でしたもの。
残酷な結末かもしれませんが、不思議と後味は悪くありません。
Commented at 2013-03-14 17:38 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 〇〇系さんへ(マサ) at 2013-03-14 20:51 x
〇〇系さんもご覧になったんですよね。
確かに、ハリウッドでは作られそうもない作品ですよね。
私は、ハリウッドのドンパチ映画よりこうした静かな映画の方がずっと好きです。
Commented by 真蘭 at 2013-03-24 23:06 x
観たいと思いながら、年齢が近いのでちょっと勇気が出なかったわ。
でも、マサさんの解説を読んだら、やっぱり観たいわ。
Commented by 眞蘭さんへ(マサ) at 2013-03-25 21:33 x
何処の国にとっても、老老介護は切実な問題なんですね。
かつての父と介護する母の姿を思い出してしまいました。似たような場面があったかなと。
配偶者と子供の思いは違うんですよね。

新宿武蔵野館、まだ間に合いますよ。

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