共喰い
2013年 09月 10日
原作は、田中慎弥の芥川賞受賞作。
受賞時には、「もらっといてやる」発言で話題を呼んだが、ここ何年かの受賞作品の中ではダントツ一番だと、私は密かに思っている。
珍しく、一気に読んだもの。
昭和63年夏。山口県下関市。
17歳の高校生・遠馬は、父親とその愛人と暮らしている。
父親には、妙な性癖があった。事の最中に女を殴ることで快感を得る暴力的な性癖だ。
遠馬の母親は、そんな男に愛想をつかし、遠馬が一歳?の時に家を出て近くで魚屋を営んでいる。
父を疎い嫌悪する遠馬だが、実は気づいている。自分の中に父親の血が流れていることに。
昭和の終わり。父と子の負の連鎖。
男たちの欲望と、魚の内臓が流される川の臭気が、漂ってきそうな映画だ。
でも、肌がべたつくような不快感がないのは、遠馬を演じる俳優が、どんなシーンを演じても少年っぽいというか、よくも悪くも爽やかだから。
カメラワークも美しい。
うまいんだか下手なんだかわからない俳優(女優)たちの中で、父親を演じる光石研と母親役の田中裕子はさすが。
ヒミズもそうだが、粗野で暴力的な父親を演じたら、光石研の右に出る者はいません。
そして、田中裕子は、どんどん凄い女優になってきている。
by masayama-chan | 2013-09-10 22:32 | Comments(2)