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水声(すいせい)   

ここ最近、チェリーの介護のため家を空けづらく(何が起きるか分からないので)、近くのスーパーと動物病院と図書館へ行くのが精一杯の日々を送っている。
そんな中、川上弘美さんの「水声」を図書館から借りてきて読んだ。

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川上さんの書く独特の世界はあまり得意でないと決めつけていたが、惹きつけられるように読んだ。

主人公の都と陵は、一つ違いの姉と弟。
ふたりが小学生だった1969年。ママが死んだ1986年。
ふたりがまた実家で一緒に暮らすようになった1996年。
それぞれの時代とママの話が交錯する。

「でも。一緒に眠るって、へんじゃないのかしら。わたしたち、きょうだいだし」

ふたりのパパとママの関係も不思議だ。
婚姻関係にはなく、パパはママの兄。つまり、パパとママは兄妹なのだ。
知り合いの武治さんが、「都と陵の本当の父親は自分」と言う。
でも、都も陵も、そして読み手の私も、そうじゃない気がする。

そして、ママが死んだ1986年の夏の夜、都と陵の間に何かが起きる。
みやこ、りょう。
遂に互いに呼びあった、あの夏の夜。
鳥が、短く、太く鳴いた夜。

インモラルにして、水のように透明感に溢れる素敵な小説だった。

by masayama-chan | 2015-03-16 20:30 | Comments(0)

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